3 血圧下げたら病気が増えた

血圧を下げたら死亡数が増えた
第2章で紹介した大櫛氏は、血圧降下剤で治療した結果、死亡率が10倍になった事例を報告しています(血圧147で薬は飲むな)。福島県郡山市で男性14551人、女性26822人を対象に行った調査を2007年にまとめたもので、大櫛氏は、血圧が高い人ほど血圧降下剤の悪影響が大きいことに気づきました。
血圧が180以上だった人々のデータを抽出すると、5年半後の死亡率が治療せずに放置したグループでは1.2%、血圧を160~179に下げたグループでは4.5%、血圧を159以下に下げたグループでは11.5%となりました。血圧を下げるほど死亡率が上がり、大きく下げたグループでは、放置したグループの10倍にもなりました。

また、医薬ビジランスセンター理事長の浜六郎医師は、著書「高血圧は薬で下げるな!」(角川書店)で、フィンランドでの調査結果を紹介しています。
1972年に38才~54才だった人々を2つのグループに分け、片方の600人は血圧降下剤を服用させ、もう片方の600人には服用させずに、15年間追跡して死亡数を見たものです。その結果が次のグラフです。

血圧降下剤を飲まなかったグループでは、死亡数が65人でしたが、血圧降下剤を飲んでいたグループでは死亡数は95人で5割も多くなっていました。心臓死は、飲まなかったグループでは19人、飲んだグループでは39人と、2倍以上の差が出ました。血圧降下剤を飲むと血圧が下がってしまい、心臓の筋肉に血液を十分に送ることができず、心筋梗塞を起こしやすいということです。また、事故死や自殺など不慮の死は、血圧降下剤を飲まなかったグループでは1人だったのに対して、飲んだグループでは16人でした。なんと16倍です。血圧降下剤で脳に血液が行かなくなった結果、運転中に脳虚血で意識を失ったり、反射神経が鈍って事故を起こしたり、うつ病になって自殺したりしたのです。最近は日本でも高齢者が運転中に高速道路を逆走したり、アクセルとブレーキを間違えてコンビニや病院などに突っ込むことが多発しています。また、老人性の「うつ」から認知症に進むケースも多くなっています。これらは高齢化だけでは説明できません。その背景に、薬剤で血圧を下げることがあるでしょう。
隠れ脳梗塞が急増している
真田祥一医師の「隠れ脳梗塞」(マキノ出版)によると、最近は「隠れ脳梗塞」が増えています。
隠れ脳梗塞とは、なんとなくやる気が起きない、物忘れがひどい、などで脳のCT検査をすると見つかる、軽度の脳梗塞です。50代では5割、60代では8割もいて、やがて本当の脳梗塞になるそうです。
急増する病気の原因は環境にあります。血圧降下剤には、副作用として脳梗塞と明記されており、大櫛名誉教授の研究では、血圧降下剤を飲んでいる人は、飲んでいない人の2倍も脳梗塞になっています。その血圧降下剤の販売量は、この20年ほどで3倍になっています。隠れ脳梗塞の急増の環境要因として、血圧降下剤の乱用があると思われます。
血圧を下げると認知症になりやすい
認知症の始まりは、「脳への血流低下による短期記憶能力の低下」です。血圧を下げると脳に血が届きにくくなりますから、認知症のリスクは増えます。このことは九州大学の久山町調査で、血圧と血糖値とアルツハイマーになるリスクとの3者の関係を、65才以上の826人について15年間追跡して調べたデータで明らかになっています(下図)。

正常血圧で正常血糖の人がアルツハイマーになるリスクを基準値(1.0)とすると、高血圧で正常血糖の人のリスクは0.9に低下していました。また正常血圧で高血糖の人のリスクは4.6でしたが、同じ高血糖でも高血圧になるとリスクは2.3に半減していました。逆に言うと、高血糖の人は、血圧を下げるとアルツハイマーのリスクが2倍になるのです。
これは、医療者が言う「正常血圧」では、65才以上の人にとっては低すぎて脳に血が届かず、医療者が言う「高血圧」こそが、高齢者が脳に血を届けるために必要な血圧だということです。しかし九州大学はこの論文で、数字を出しただけで、「血圧を下げると認知症になりやすい」という、自分たちが発見した重要な事実について何も語っていません。
筆者は2013年11月に、大阪で認知症のセミナーを聴きました。質問コーナーで筆者は、血圧と認知症との関係について質問しました、すると大阪大学の若手医師が「高血圧が認知症のリスクにならないことは分かっている」と答えました。ひねった言い方ですが、これは血圧が高い方が認知症になりにくいという意味です。つまり九州大学のこのデータは、医療者の共通認識になっているのです。しかしそれは、公言してはいけないことのようです。
血圧を下げたら要介護が増えた
また、前述の浜六郎医師は、血圧降下剤で血圧を下げたら、高齢になって自立度が低下して要介護が増えたという調査結果を紹介しています。
それは1980年に厚生省が行った「国民栄養調査」の調査対象者25000人のうち、当時60才以上だった人を滋賀医科大学が14年後に追跡調査したものです。厚生省の調査では対象者の血圧と血圧降下剤の服用の有無を記録していました。14年後の1994年にその人たちの要介護度がどうなっていたかを調べた結果が次のグラフです。浜医師のグラフは「自立度」で表現していましたが、ここではそれを逆向きにして要介護度で表現します。

緑色の棒グラフは、血圧降下剤を飲んでいなかった人で、14年後に要介護になった人の割合です。茶色の棒グラフは、血圧降下剤を飲んでいた人で、14年後に要介護になった人の割合です。血圧降下剤を飲んでいた人は、飲まない人より介護を受けるケースが多くなっていました。特に、血圧降下剤で血圧を120未満にした人は70%が要介護になっています。血圧を下げると、頭がぼけたり、ふらついて転んで骨折したりして、介護のリスクが高まるのです。
血圧を下げたら腎臓が悪くなった 
腎臓は尿を作ります。腎臓というフィルターが血液を「ふるい」にかけて、老廃物と水分を血液から分離して、尿として排泄します。昔は家を建てる現場で「ふるい」が使われていました。金網の上に砂や土を乗せて揺すると、細かい粒だけが網目を通って下に落ちて壁の材料となります。豆腐を作る時には、ゆでた大豆を絹の袋や木綿の袋に入れて絞ります。これもフィルターです。フィルターで分離するには力が必要です。「ふるい」は重力で分離し、豆腐は指や腕の力で絞ります。では腎臓のフィルターで、血液から老廃物を絞り出す力は何か。それは血圧です。体内のパワーは血圧しかないからです。腎臓は血圧を必要としているのです。
人は年を取ると腎臓のフィルターも目詰まりしてきて、若い頃よりも圧力が必要になってきます。ですから、腎臓の機能を維持するためにも、人は年を取ると血圧を上げる必要があるのです。このことを示すデータがあります。2015年9月にアメリカ国立心肺血液研究所が研究した結果です。

50歳以上の高血圧者約9400人に血圧降下剤を飲ませて、血圧を強く抑制して120未満にするグループと、ゆるく抑制して120~140にするグループに分けて、3年間経過を見ました。すると、血圧を120~140にしたグループでは急性腎不全の発生率が2.5%であったのに対し、血圧を120未満にしたグループでは発生率が4.1%と大きくなりました。
ただしこの研究では、心不全も調べられていて、心不全の発生率は血圧を下げた方が減っていました。そのことからアメリカでは、血圧を120以下にしようという議論も出ています。しかしそれはアメリカの特殊事情で、アメリカには心不全の患者が初めから6千万人もいるのです(日本では100~200万人)。アメリカ人には肥満が多く、動脈の壁に脂質がこびりついていて、血圧が上がるとそれがはがれ落ちて心臓の血管に詰まるのです。ですからアメリカ人は、血圧を下げるより先に肥満を改善する必要があります。
また別のデータでは、2014年のアメリカ医学会誌に、米国の退役軍人(高齢男性)のうち慢性腎炎患者の人たちを対象にして、血圧降下剤で血圧を下げた結果が報告されています。
血圧を120~140に下げたグループの6年後の死亡率が24%だったのに対して、120以下に下げたグループの死亡率は41%で、1.7倍でした。これらの2つのデータを合わせると、血圧が低いほど腎不全になりやすく、すでに慢性腎炎の人は死亡しやすくなる、ということです。

人体の仕組みは、腎臓自身がレニンという物質を分泌して、脳や体に「血圧を上げろ」と命令できるようになっています。腎臓の機能が低下したとき、腎臓は血流を確保しようとして血圧を上げるのです。
ノーベル医学賞の山中伸弥博士もNHK番組で、腎臓には血圧を上げる機能があると言っています。

ところが血圧降下剤はそのメカニズムを無効にして、血圧を下げます。山中博士は番組中で「腎臓のためには余分な薬はのまない方がよい」と強いメッセージを出しました。腎臓は大量の血液が流れるので、薬剤の影響を受けやすいのです。
血圧を下げると緑内障になりやすい
日本に緑内障の人は約500万人いて、年々増えています。青い目の西洋人がなると、目が緑色に見えるようになるので、緑内障と言うそうです。
緑内障は眼圧が高いために起きると言われてきましたが、現在では、眼圧が正常な人でもいくらでも緑内障になることが分かってきました。さらに新しいことが分かりました。NHK番組「ためしてがってん」がそれを紹介していましたが、熱感知カメラで眼底の網膜を見ると、緑内障のない正常な人の網膜は、次図の上側の写真のように緑色に見えました。赤い部分は網膜中央部の太い血管で、血液がたくさん流れているので熱があり、それをコンピュータが赤い色で表現しています。緑色の部分は毛細血管の血流が十分にあるので、やや熱があり、それをコンピュータが緑色で表現しています。この血流によって網膜は元気に働けるわけです。ところが、緑内障になって何年も経っている人の網膜を、次々にのぞいて見ると、全員が下側の写真のように青くなっていました。青い部分は血流が弱いことを示しています。すなわち、緑内障ではない人の眼底は全員が緑色で、緑内障の人の眼底は全員が青色なのです。

これは緑内障かどうかは網膜の血流で分かるということです。なるほど、青い目の眼底の血流が減って冷えたら、目は深い緑色になりそうです。また、緑内障の進行は、眼の周囲から視野がなくなって行きますが、これは眼圧説では説明できませんでした。しかし中央の太い血管から遠いところから、だんだん血流が減ってくると考えれば説明できます。
これらのことから緑内障とは「網膜の血流低下」だと考えられます。番組ではまた、緑内障のない正常な人の片手を氷水につけて10秒間冷やす実験をしました。するとそれだけで網膜が真っ青になりました。体が冷えると血流が低下し、網膜の血流も低下するのです。
以上のことから、緑内障を予防し改善する方法は、体全体の血流を良くすることだと思われます。そのためには血圧は下げてはいけません。低血圧の人は緑内障になりやすいとも言われています。血圧降下剤の乱用で、必要な血圧を保てなくして血流を悪くすることが、緑内障増加の背景にある可能性があります。

血圧降下剤でEDになる
日本性機能学会の「ED治療ガイドライン2012」によると、日本にはED(勃起不全)で悩む男性が、中程度ED(時々できる)が870万人、完全ED(全くできない)が260万人、合計1130万人いて、50代以上の半数がEDだそうです。

高血圧の358人を対象とした調査では、血圧降下剤を飲んでいた人が267人で、うち108人(40%)がED、血圧降下剤を飲んでいない人は91人で、うち18人(20%)がEDでした。40%と20%ですから、血圧降下剤を飲んでいると、EDになる確率が2倍になるのです。


このことから日本性機能学会は、血圧降下剤をEDのリスク要因としています。しかしこのデータは、見方を少し変えると、実はもっと驚くことを示しています。EDを中心にして見ると、調査したらEDの人が126人いて、そのなんと9割(86%)までが、血圧降下剤を飲んでいたのです。

勃起には十分な血圧と血量が必要で、血圧降下剤は血圧と血量を減らしますから、血圧降下剤でEDは、増えて当然、増えない方がおかしいのです。

血圧を下げると「がん」になりやすい
がんが増えています。「がん細胞」は、毎日何万個も、出来ては壊れ、出来ては壊れしています。年をとると、出来る方が増えて、壊れる方が減るので、がん細胞が増殖しやすくなります。つまり、がんも老人病の1つです。
人体は免疫によって外敵から守られていて、免疫細胞は、がん細胞を異物と見なして攻撃し、壊してくれます。免疫の活力の源は「血のめぐり」です。血のめぐりが良ければ、免疫細胞にも酸素と栄養が届いて、元気で、がんや外敵から身を守ってくれます。また、がん細胞は体温が低いと増殖します。血流が悪いと免疫細胞が弱り、体温が低下して、がんが増殖してしまいます。
年を取るとどうしても血のめぐりが悪くなります。それを補うために人は血圧を上げて、血のめぐりを保とうとします。それを薬剤で無理に下げると、人体はそれを感知して、さらに血圧を上げようとして、薬剤とのイタチごっこが始まり、薬が増えます。
血圧が下がると、免疫機能が弱りますから、がんだけでなく、風邪を引きやすいとか、皮膚病になりやすいとか、いろいろな病気になりやすくなります。ですから、これまで述べたように、血圧を下げた方が死亡率が高くなるのです。

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