5 医療費を節減する方法

医療費が増えるわけ
日本の医療は世界的にも優れていて、国民は大いに医療の恩恵を受けています。日本の平均寿命が世界最高のレベルであることが、それを示しています。また、救急医療とか、難しい手術とか、乳幼児や小児のケアとか、地域医療とか、最新の研究など、医療関係者は日夜献身的に活動してくれています。
しかし構造的な問題もあります。日本では医療を受ける側は社会主義的で、国民皆保険で安く医療を受けられます。しかしそれが安易な医療依存を生み、医療費を増大させています。一方で、産業としての医療には利益重視、経営重視の資本主義の面があります。ですから医療費が増えることは歓迎です。そして製薬企業は完全な資本主義で、薬が売れればよいわけです。というわけで日本では、患者側からも医療者からも製薬会社からも、医療費を増大させる圧力がかかっています。そのため医療費は、この40年間で2兆円から40兆円に増えてきました。国や国民の負担はもはや限界です。

基準値は第3者が決めるべき
高血圧学会は血圧基準を定め、国民全員の血圧を140以下にしようとしています。それによって血圧降下剤の売上げは急増し、製薬会社の利益も大幅に増加してきました。

基準委員会の委員(医学部教授)たちは、血圧降下剤のメーカーから多額の寄付を受けています。2008年3月30日の読売新聞で「指針作成医9割へ寄付金 製薬企業から」という報道がありました。血圧目標値130を定めた、2004年の「高血圧ガイドライン」を作成した9人の委員が、製薬会社から02~04年の3年間で総計8億円以上の寄付金を得ていたのです。


血圧基準を決める教授たちに、製薬会社から3年にわたって8億円が支払われ、3年目に教授たちが決めた血圧基準によって、製薬会社はその後毎年、何百億円も利益を得るようになったという、分かりやすい構図です。高血圧学会は、血圧基準の利害の当事者なのです。医療分野では血圧以外にもいろいろな基準が、利害の当事者によって決められていて、分布の中央に線を引くような乱暴なサジ加減が横行しています。その結果、人間ドックで9割に赤信号が出るという異常な状況です。
利害の当事者にサジ加減を任せると、往々にして社会に不利益が生じます。ですから普通はそういう仕組みにはしません。これは個人の問題ではなく制度の問題です。血圧基準の決定を高血圧学会に任せることは、社会制度として間違っているのです。基準委員会には、医療産業と利害関係のない、第3者の科学者や知識人を入れるべきです。
健保組合では医療費を削減できない
健保組合は医療費の増大に歯止めをかけそうに見えます。支払い側だからです。2014年に健保組合は、これまでの健康基準は間違っていたと発表しました。人間ドック学会と共同で、150万例のビッグデータを解析したところ、血圧やコレステロールなど、これまでの基準値が厳しすぎることが分かったのです。たとえば血圧は129までとされていましたが、147でも問題ないと発表しました。

これは医療側に対する健保組合の反乱でした。組合の多くが赤字です。そこで組合は、基準値がおかしいのではないか、と考えて独自の調査をしたわけです。得られた結果は、150万の実例に基づく科学的で合理的なものでした。しかし基準値が129から147に変わっては、血圧降下剤の売上げは激減します。反乱は医療側の反撃であっさりと腰砕けになりました。なぜ健保組合は負けたのでしょうか。それは、健保組合というものが半分は医療産業だからです。組合は支払いを減らしたいと言いますが、実はそれは建前でしかありません。組合員はそうでも、組合自体、あるいは組合専従者はそうではないのです。組合にとっては、医療費が減ることは、自分の仕事のボリュームが縮むことを意味します。赤字で組合がつぶれては困りますが、規模が縮小しても面白くありません。健保組合にとっては、組合がつぶれない程度に、そこそこ医療費がかかることが望ましいのです。
企業経営者なら削減できる
では、増え続ける医療費に歯止めをかけるのは誰か。その動機と実力を持っているのは企業経営者です。企業にとって健保支出は仕入れと同じです。仕入れ担当者が納入業者の言いなりでは大損します。経済面だけではなく、不適切な基準によって、従業員の健康が逆に損なわれているのです。これまで企業経営者は、自分は専門家ではないからと健保組合に任せてきました。しかし専門家でなくても、常識で判断できることがたくさんあります。企業経営者が前面に出て、他企業とも連携して、従業員の真の健康と医療費節減とを目指せば、医療費の野放図な増大に歯止めをかけることができます。
個人のレベルで削減できる
しかし実は、もっと即効性のある方法があります。それは医療を受ける1人1人が、「医療も産業だから、売上げ増大を目指すのも無理はない」とクールに受け止めることです。すると、医療側の言いなりになることは必ずしも自分の利益にならない、という思考が生まれます。多くの人がそうなれば、医療費はすぐに5%(2兆円)くらい減るでしょう。興味深い例があります。財政破綻した北海道の夕張市では、市民病院が閉鎖されました。すると人々は健康に自助努力をするようになり、医療費は減り、人々は健康になったのです。筆者が製造する磁気活水器を使っている数千人でも、医療費が減っています。(完)

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