下の血圧とは何か

閑話休題

ここまで述べてきたのは、収縮期の血圧で、「上の血圧」と言われるものです。ところが「下の血圧が高い」と言われることがあります。下の血圧とは、心臓が拍動を終わって、静脈側から血液を吸いこんでいる時(拡張期)の、動脈の血圧です。

心臓から押し出された血液は動脈に入り、動脈の弾力で毛細血管へと押し出されて行きます。
この時の動脈の圧力の変化の様子を次図に示します。

赤いい線が普通の心臓の動きです。心臓が血を押し出す時(収縮期)に、血圧は上がり(上の血圧)、そのあと心臓が血を吸いこんで(拡張期)いる間に、動脈内の血液は毛細血管に押し出されて、血圧はだんだん下ってきて、次の収縮の直前に最低になります。これを拡張期血圧(下の血圧)と言います。心臓が吸い込みをしている間も、動脈の血圧がゼロにならないのは、動脈血管に弾力があるからです。動脈の中の血液が、動脈血管の弾力で毛細血管側に押し出されて、血管中の血液が減ってくると、だんだん血圧は下がってゆきます。

しかし血管が弾力を失って縮まなくなると、下の血圧はすっと下がります(茶色の線)。これは例えば、ガラスの容器のように弾力のない容器に液体を押し込んで圧力を高くしていても、液体が1滴でももれると圧力がすっと落ちるのと同じ理屈です。すなわち老化によって血管が硬くなると、下の血圧は低下することになります。
一方、毛細血管の血流が悪くなって、動脈からの血液の押し出しに時間がかかると、下の血圧が下がりきらないうちに次の拍動が始まります(オレンジの線)。ですから、老化によって下の血圧は上昇することになります。

下の血圧は気にしなくてよい

つまり、老化によって下の血圧は、下降する要素もあれば、上昇する要素もあります。では年を取ると下の血圧は上がるのか?下がるのか?それを示すデータがあります。 前掲したフラミンガム調査では、下の血圧も測定されています(次図)。

緑色の線が平均値です。下の血圧は、60才頃まで上昇し、60才を過ぎる頃から下降しています。そのメカニズムは、年令とともに、毛細血管の血のめぐりが悪くなって、上の血圧も下の血圧も上昇しますが、60才を過ぎるころから、血管壁が硬くなってきて、下の血圧を上げることができなくなり、下の血圧だけ下がり出すのです。

ですから、下の血圧が70だから安心だ、ということはありません。30代に70だった下の血圧が、80代でまた70に戻りますが、この2つの70は意味が全然違うからです。

下の血圧が高いのは良くないと言われますが、それは毛細血管の血のめぐりが悪くなっていることの現れに過ぎません。その状況を放置したまま、下の血圧を下げることは、仮に出来たとしても、無意味です。

また逆に、下の血圧が低ければ良いのか、というと、それは老化で動脈の血管壁が固くなっていることの現れですから、良いわけではありません。

要するに下の血圧は、老化に伴う自然現象として上図のように変化するのです。高いの低いのと気にすることは無意味です。それに、気にしたところで、下の血圧だけ変えられるわけではありません。

スペース

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする