頭蓋骨の構造から考えると、口を動かせば蝶形骨も動きそうである。接客のセミナーなどで、笑顔が大切だと指導される。笑う気分でなくても、無理にでも口角を上げると良いと言われる。口角を上げると蝶形骨が動いて、脳髄液が流れて精神が安定し、接客もうまく行くのである。
乳児も笑う。「柴犬きなこと道産子夫婦」という動画で、赤ちゃんが柴犬の動作を見てキャッキャと笑っている。
笑顔は、相手に対する敵意のないことを示す。だから乳児も、周囲を味方にするために笑う、という説もある。しかし元々、脳を安定的に成長させるために、脳髄液を循環させて新陳代謝を促進する必要があり、蝶形骨を動かす必要があって、乳児も笑うのだ、とも考えられる。認知症やうつ病になると、精神的に不活性になって笑顔が失われる。しかしこれは逆に、笑顔が失われることで蝶形骨が動かなくなり、脳髄液の循環が悪くなって、認知症やうつがひどくなるという因果もありそうである。うつになる人は真面目な人が多い、と言われるが、もともと四角四面な人は、あまり笑うこともなく蝶形骨の動きが悪いのではないか。若い頃から冗談を言ったりしてよく笑う人は、認知症にもなりにくそうである。がんなどの重い病気から回復するのに笑いが有効だということもある。いずれも蝶形骨が動いて脳髄液がよく流れ、脳が安定すると考えられる。
人類の、他の高等動物にはない大きな特徴は、笑うことである。笑顔を作る表情筋が発達している。だから笑える。他の高等動物は笑わない。笑顔を作る表情筋がないからである。大脳が発達した人類では、脳を正常に作動させるために脳髄液を循環させることが、他の動物たちより重要で、そのためには蝶形骨を動かす必要があり、蝶形骨を動かすための表情筋が発達したのではないか。そして笑顔は、敵意が無いことを示す全人類共通のしぐさとして定着したわけである。
「笑う門には福来たる」という慣用句は、単なる精神論ではなく、その背景には、笑う→蝶形骨が動く→脳髄液が流れる→脳が健全になる、という物理的メカニズムがあると思われる。
よく噛む
子供の頃から、食物はよく噛んで食べるように、と言われる。それは食物を細かく砕き、唾液で消化し、唾液で消毒することなどが理由だが、もう一つ、よく噛むことで蝶形骨の動きが良くなる、ということもあるだろう。
実際に咀嚼と脳の活動との関係は、いろいろと実験や統計で調べられている。ネズミにやわらかい食物を与え続けたら、咀嚼運動が減少してそのネズミたちが認知症になったとか、歯を失うと認知症になりやすいとか、入れ歯だとアルツハイマーになりやすい、などの事実が報告されている。それは咀嚼によって脳内物質の分泌が促進されるからだと説明されているが、咀嚼と分泌との間をつなぐのは、蝶形骨の動きによる脳髄液の流れの改善だと考えられる。
つづく