脳髄液の流れ改善法 ②睡眠

上図は2013年に米国の科学誌サイエンスに発表された論文である。
この研究で、脳細胞は睡眠中に少し縮んで、脳の中にスキマが出来て、そのスキマに脳髄液が入り込んで、脳で発生した老廃物を持ち去る、という循環があることが分かった。

上図は、睡眠中に個々の脳細胞が縮んで、脳髄液が脳細胞のスキマを流れることのイメージ図である。
この研究が関心を持っていた老廃物は、アルツハイマー型認知症を引き起こすアミロイドベータという物質だったが、とにかく昼行性の動物(人間など)は、昼間活動していると脳で老廃物が発生し、それが夜に睡眠している間に、脳髄液によって除去される、というメカニズムが発見されたのである。
老廃物を除去するために大切なのは、脳髄液が脳のすきまに十分に入り込むことで、そのためにはしっかり睡眠を取る必要がある。これは、脳のある動物は、人も犬も猫も鳥も羊も池の鯉も、なぜ眠らなければならないのかという人類の長年の疑問に対する答えである。眠らないと老廃物が溜まって脳が働かなくなるのである。
最近は脳髄液の重要性についての科学研究が進んでいて、講談社ブルーバックスから下図のような本も出ている。表紙の絵に、脳を包む脳髄液がきちんと描かれていることが、現代西洋医学の医療者たちが知らない事実を示している。

睡眠は店舗のバックヤードである
睡眠時に脳は、何もしないで休んでいるのではなく、昼間とは別の大事な仕事をしている。脳で発生した老廃物を除去したり、記憶を整理し定着させたりしている。店舗などで、売場ではない場所をバックヤード(裏庭)という。小売店の商品庫や、飲食店の厨房である。コンビニの表の売り場は24時間明るく忙しく活動しているが、それはバックヤードの作業に支えられている。

人間の、覚醒時の活動と睡眠時の脳の活動との関係は、店舗における売場の仕事とバックヤードの仕事との関係と同じである。心身の健康を維持するために、どちらも同じく重要である。睡眠時間の長さも重要だが、脳がなすべき仕事を出来ているかどうか、すなわち睡眠の質もまた、脳を健全に保つためにきわめて重要である。
ユーチューブにはうつ病の人が動画をたくさんアップして体験を語っているが、一様に見られるのは、睡眠の時刻や時間が不規則で、睡眠の質が悪いことである。夜遅くまでスマホでゲームをしていたり、朝起きられず何時間もベッドの中でゴロゴロしていたりする。これでは脳のバックヤードの作業が出来ない。この状態から脱却しなければ、うつの完治はなく、逆に言うと、睡眠の質を改善出来れば完治への道が開ける。
飲酒はNO
大阪の「のむら整骨院」の野村晃生氏は、「自律神経を整える5つの条件」という最新の動画で、「寝る前に酒を飲むと良く眠れる」というのは間違いだと指摘している。酒を飲んで眠っている時の脳波は、軽い麻酔をかけられている時の脳波と同じであることが分かったそうである(37分あたり)。たしかに酒を飲むと眠くなるが、その睡眠では 脳は鈍くなってしまっていて、それではバックヤードの作業ができないのである。

ユーチューブで「Takuzoooの朝の会」を発信しているタクゾー氏は、自身がうつ病の治療を受けている。その最新動画でタクゾー氏は、うつを治すには習慣的な飲酒はやめろ、と力説している。せっかく、うつから脱出する努力をしていても、深酒すると元に戻ってしまう。脳のバックヤード機能が低下してしまうのである。

脳が不調ではない時は、適量の飲酒は人生の楽しみとしてあってよいだろうが、脳が不調で回復を目指している時は、習慣的な飲酒は避けるべきである。
太陽光が良い睡眠をもたらす
人間は昼行性の動物である。昼間に太陽光を浴びて活動すると、脳内でセロトニンという物質が分泌され、セロトニンは夜になると自然にメラトニンという睡眠促進物質に変化する。すると自然に眠くなる。眠ると脳内でバックヤードの作業が始まる。これが質の良い睡眠である。

つづく